Cinema Soul

~面白い映画を追い求めて~

ギター弾きの恋 Sweet and Lowdown

      2017/06/03

監督-ウディ・アレン 1999年 95分

脚本-ウディ・アレン

出演-ショーン・ペン、サマンサ・モートン、ユマ・サーマン、他

あらすじ

かつて名声を得ずに人知れずこの世を去った名ギタリスト、エメット・レイ。

名ギタリストではあるが、自惚れ屋で、いつも演奏に遅刻したり、泥酔してすっぽかしたり、自堕落な私生活が影響し、今一つ名声を得れないでいた。

真夜中に電車を見に行ったり、ごみ溜めにいるネズミを銃で撃ったりするのが趣味という変わった一面を持つエメット。

自分は天才でアーティストだから、結婚もしないし縛られない、と言っていたエメットだったが、演奏先で知り合った口がきけない女性ハッティと仲良くなり、行動を共にすることになるが・・・。

 感想

危ういエメット

ショーン・ペンが危うい主人公を好演している。

自分のことを自分で天才だと言い張る天才エメット。

腕は一流だが、心は二流で、今一つパッとしない。

本当にギターがうまいものだから、そこに満足して中々真面目に自分の道を追求しようとしない。

そこそこの現状に満足してしまう、アーティストが陥りがちな心理かもしれない。

エメットの行動は、いつもこんな適当で大丈夫かと思わされる。

こういう役をショーン・ペンに演じさせたら逸品だ。

 ハッティとの恋

口がきけないハッティとの交流はなんとも心温まるものでいい。

普通の人は、もしかしたら相手が口をきけないということに臆してしまうかもしれないが、エメットはそんなことおかまいなしに普通に接していく。

ハッティがしゃべれなくても、ガンガンしゃべっていき、何を思っているか察し、二人の会話は成立する。

天才が故に、細かいことは気にしないのかもしれない。

粋でいい。

 ハッティが教えてくれたもの

いつまでも自分の腕にうぬぼれて、やりたい放題やっていいだろうと思い続けているエメット。

ある意味、人をなめているし、自分のこともなめている。

失敗して怒られようが、まだ大丈夫だろう、まだ大丈夫だろう、と自分をごまかし続け、気づいたら取り返しのつかないものを失っている。

こればっかしは、自分で気が付くしかない。

誰も怒ってくれる人なんていないし、教えてくれる人もいない。

ましてや、こんなわがままに見える人間に、紳士的に忠告して教えてくれる、神様のような人なんて出てくるわけがない。

というか、いつでも気づく箇所はあったし、周りから忠告のようなものはあっても、エメットは全く耳を貸そうとしてこなかった。

そんな彼に周りもそれ以上どうこうしようがないということだろう。

結果的に、それを一番教えてくれたのがハッティだった。

ハッティを失ったときに、初めてエメットは自分で自分のことを見つめ始めたんだろう。

ハッティよりもゴージャスで華やかなブランチを失った時よりも、その代償は大きい。

ブランチがエメットに求めたのは、小説家の自分に相応しい刺激的な夫であり、本当の意味でエメットを好きだった訳ではなく、エメットの外側ばかりを見ていたに過ぎない。

ハッティはそんなものはどうでもよく、自分と一緒にいてくれたらそれでよかった。

エメットがちょっとくらい変わっていようが、エメットの身の回りの世話をしながら、お互い誕生日プレゼントを交換したり、食事に行ったり、そんな些細な生活で幸せだった。

ハッティの方が、よりエメットの内面的な部分に寄り添っていたんだろう。

自分でも気づかなった、心の支えになっていた部分が、失って初めて他に代えがたいものだと気付く。

ハッティにふられてから、心を紛らわそうと知り合ったばかりの女性を線路に連れ出し、ギターを無理やり聞かせ、自分は何にも変わっていないと、自分に言い聞かせるように行動するエメットがなんとも切ない。

今まで大事にしてきた自分のギターすら壊してしまう所は、エメットがどれだけ心を締め付けられているのかが分かる。

散々格好つけて周りに吹聴してきて、自分が今まで一番の武器にしてきたこのギターだが、こんなものが何だ、と言わんばかりだ。

このギターこそ、自分の滑稽さの象徴かのように思えたのだろう。

実に切ないシーンだ。

 遊び心満載の本作

ドキュメント風のインタビューも入っていたり、大げさなセットを作って失敗したり、エメットが仕返しをするために車に潜んだら偶然ジャンゴに遭遇したりと、遊び心が入っている部分が多く結構盛りだくさんだが、実に強烈なメッセージが込められている。

その盛りだくさんさに気づきにくいが、後からじわじわと心を刺激される。

人は失ってからでないと大切なものは分からない、シンプルではあるが深いメッセージを、短絡的でない語り口でユーモアを交えながら描かれている。

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