魂の辛口映画感想

~面白い映画って本当に少ない~

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ドラゴンタトゥーの女 The Girl with the Dragon Tattoo

      2017/06/03

監督-デヴィッド・フィンチャー 158分 2011年
脚本-スティーブ・ザイリアン
出演-ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、他

感想

リメイク元とハリウッド版を比べてみる

リメイク元の「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」を見てからこのハリウッド版を見た。

リメイクとはいえ、他の作品と比べて感想を綴るのはあまり好みではないが、立て続けに見てしまい、同じ原作でもかなり描き方に違いがあるのが興味深かったので、今回に限り、元の作品と比べながらハリウッド版の感想を書いてみたい。

結論から言うと、元の作品の方が面白かった。

ハリウッド版は映像自体が薄暗い感じで重厚感があるが、人物描写が希薄で内容が薄く感じた。

なぜリメイクしたのだろうと思ってしまった。

元の良さを凝縮した上で短くして見やすくしたというのならまだわかるが、重要な部分を抜いて元より下がってしまうのならリメイクする意味はあるのか?

ハリウッド版の俳優はダニエル・クレイグ

主人公のミカエルはハリウッド版ではダニエル・クレイグが演じている。

リメイク版のミカエルは、元の主人公のミカエル・ニクヴィストより顔立ちは整っているが、人間的な重厚感に欠ける。

しゃべらないと格好いいが、振る舞いが若いお兄ちゃんのような軽い感じに見えてしまうので物足りない。

なぜこういう演出にしてしまったのか?

ダニエル・クレイグならではの良い味というものが出るべきなのに、それが出ずじまいだ。

依頼を引き受けたのも、あくまで自分の保身のため

ヘンリックから調査を依頼されたが、それを引き受けた動機があくまで仕事としての理由しかなく、人間的な部分が見えない。

ミレニアムだと、ミカエルには自分が子供の頃に出会ったハリエットの優しい記憶があり、あの人に何があったのかと気になるのは自然だ。

それは自分が裁判で負けて傷心しているから隠れたい、仕事が欲しいというような気持ちとは別に、ハリエットが行方不明であるというこの事件自体に純粋に興味を持ったからだろう。

純粋に記者魂をくすぐられたと言ってもいい。 

見ているこっちとしたら、ヘンリックの良い人柄も合わせて自然に事件に興味を抱ける。

リメイク版ではそういった心理は描かれずに、自分の裁判に有利になるかもしれないという保身から依頼を引き受ける。

ハリエットへの思いがあった訳でもなく、記者魂がくすぐられた訳でもなく、感情的・人間的な動機が欠けている。

ミレニアムのミカエルは裁判で負けたが決して心は屈しておらず、決してなくなった仕事を埋めるためにしかたなく依頼を引き受けたわけではない。

しかし、リメイク版のミカエルは裁判で負けたことにひどく動揺しており、依頼が来たのも仕事がないからむしろちょうどいいとさえ思ってるんじゃないか?

ミレニアムのミカエルが自分が正しいと思ったことに突き進む人間的なおじさんだとしたら、リメイク版のミカエルは世間体を気にする仕事第一の若者という感じか。

仕事というよりも自分の興味優先だという抜けたスタンスと、お金になる仕事や世間体が優先だというスタンスでは全然違う人間だ。

根っからの記者魂がある人間と、そうでない普通の仕事人間。

どちらに人間的に魅力があるかは明らかで、リメイクしたのになぜミカエルの魅力を削いだのかがとても解せない。

リメイク版は人間的な情からくる興味や探究心というよりも、かなり事務的に仕事を引き受けたように見えてしまう。

そんな感じで感情の起伏なく、なんとなくミカエルが調査に取りかかるので、見ていて最初からあまり惹き付けられない。

リスベットはなぜ調査に加わった?

リスベットが助手になるところも雑すぎる。

ミレニアムではリスベットはミカエルが無実であることを最初から知っていて、この男がこれからどうするのか興味を持ち、勝手にパソコンに入り込んだりしてことあるごとにミカエルの動向をチェックしていた。 

しまいには暗号のヒントをいてもたってもいられずにミカエルにメールしてしまい、ミカエルに興味があることを見抜かれ、促される形で自分の意志で調査に加わわった。

ミカエルにとっても助かるし、リスベットも真相が知りたいから、お互いの利害が一致した自然な加わり方だ。

リメイク版ではミカエルがいきなり助手が必要だと言い出し、半ば脅しのような形で強引にリスベットを調査に加わらせようとする。

リスベットがミカエルに興味があるという描写はほとんどなく、その状態で調査に加わるというのはただ断れないからということになってしまう。

それだとリスベットが捜査に加わる動機がなく、ミレニアムのような気持ち良さもへったくれもない。

こんな強引なやり方をするミカエルはどうかと思うし、「男を憎む女」という原作のテーマを鑑みても、こういう力に物言わせる男をリスベットは嫌いだったんじゃないのか?

そうであるならばリスベットは脅されようが是が非でも拒否するという行為に出ても良かったんじゃないのか。

リスベットはなぜミカエルと恋仲になった?

リスベットがミカエルと恋仲になるのもなぜかわからない。

ミレニアムでは、リスベットはミカエルの正義感がある行動だけでなく、人を無闇に傷つけようとしない優しさなど、今まで自分を傷つけようとしてきた普通の男たちとは違う何かをミカエルに感じたから心を許したんだろう。

ミレニアムのミカエルにはリスベットに手を出そうとする所など微塵もなく、急に黙りこんだり不機嫌になったりしたリスベットに対して全く責めずに包みこんだり、優しさが随所に感じられる。

それはもう言ってみればお父さんのような感じにも近いが、それでもリスベットが心を許すのは分かる。

一方リメイク版のミカエルはリスベットが今まで接してきたごく普通の男だ。

ただえさえ最初の出会いから強引な感じがあるミカエルに、リスベットが心を許すきっかけになった出来事は特に何もなかった。

強いて言えばミカエルが銃で打たれて血だらけで帰ってきたくらいで、その痛みを忘れさせるためだったのか、母性をくすぐられたのか、どっちにしてもつながらないし、リスベットが取りそうな行動ではない。

それ以降はもう普通に恋仲になって接しているので、闇を抱えて引きずっている感など少しもなく、ごく普通の若者同士のカップルの様になってしまっている。 

リスベットの闇が感じられない

ミレニアムではことあるごとにリスベットがかつての自分を思い出して葛藤する場面が見られる。

急に不機嫌になって黙ったり、過去の自分と戦っていた。

ミカエルの前で変な雰囲気を作ってしまうことも多々あった。

それがリメイク版では全く見られない。

リスベットは能力の高い変わった女性としか描かれていずに、外見の雰囲気だけで中身の描写が欠落している。

最後にミカエルにプレゼントを送ろうとしたが止めたシーンも、リスベットの暗さが描かれていないので、ただ恋人に振られただけのシーンになってしまっている。

本当だったら、男に対して心を開かなかったリスベットがミカエルには初めてくらいに開けたが、それもはかなく泡と化し、また元の闇を抱えたリスベットに戻ったという、切ないがその生き方もそれはそれで格好いいという良いシーンにしたかったのだろうが、重要な闇の描写が皆無なので効いてくるはずもなく、そうはできていない。 

登場人物ほぼ全員魅力がない

人間的に良かったシーンは最後のハリエットとヘンリックの再開のシーンだけだ。

ミカエルもリスベットも普通なら、ヴァンゲルグループの一族は性格の悪い人間ばかりで、救いがない。 

ミレニアムではヘンリックもハリエットも優しい人間のイメージとして描かれていて、より真相を知りたくなるし、解決した時にはなんともすっきりする。

リメイク版ではヘンリックもかなり癖がある人間として描かれていて、そのどろどろした一族というのも気味が悪くて興味はあるが、深い人間ドラマになり得る要素にはなっていない。

そんなヘンリックが最後のシーンで破顔するシーンは悪くないが、鬼の目にも涙といった感じで余韻を引くほどではない。

ミレニアムではミカエルの正義感と優しさ、リスベットの闇とその葛藤、ヘンリックのハリエットへの思い、マルティンの異常性格など、人間的な部分が交錯して深いドラマになっているが、リメイク版にそういった人間的深さはない。

リメイク版は見た目は重厚な雰囲気に見えるだけの普通のサスペンスになってしまっている。

リメイク版のような暗い映像の雰囲気、もり立てる落ち着いた音楽など、一見重厚とされがちだが、人間的な部分の分厚さなくして重厚と呼ぶにはほど遠い。

なぜリメイクしたのか知りたい

大事な部分を抜いて表面的にだけ格好よく仕上げるというのは意図が分からない。

商業的にも中身もしっかり描かれている方がより成功するはずだろう。

あえて人間的な描写を抜いたのだとしたら、それを補うだけの何かがなければいけないが、そうなっているわけでもない。

もし気づかずにやっていたとしたら、ちゃんと元の作品を見たのかと言いたい。

リメイクって一体なんなんだろう。

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