映画「黒猫・白猫(1999)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

黒猫・白猫 原題:CHAT NOIR, CHAT BLANC

監督:エミール・クストリッツァ 1999年 130分

脚本:ゴルダン・ミヒッチ

出演:バイラム・セヴェルジャン、スルジャン・トドロヴィッチ、フロリアン・アイディーニ、他

“オススメ☆4”の理由と考察、その感想

エネルギッシュな作品

実にエネルギッシュでどたばたな人間だ。

全編に渡って静かに感じるシーンはほとんどなく、見るのもエネルギーがいる作品だ。

普通後半がしぼんだりするが、これはずっとぶっつづけでテンションが高いまま2時間以上見せてしまうからすごい。

むしろ後半に連れどんどんテンションが上がっていく。

登場人物全員が風貌から性格まで、まるで漫画のような個性的な人物がひしめき合っている。

大げさな描写もあるが、それでもうまい具合にそれぞれ個性的に成立してしまっているのはすごいと思う。

ただえさえ濃い登場人物達が、さらにどったんばったんと縦横無尽に動き回るものだから、まあ圧倒されてしまう。

よく言えばエネルギッシュ、悪く言えばあくが強いという感じだろうか。

本当にドタバタしている

たまにコメディ映画でドタバタ風というのを目にするが、これは本当にドタバタ感がすごい。

あざとく無理に動き回ったり物を壊したりするコメディは見ていてきついものがあるが、この作品は実に絶妙なドタバタ加減になっている。

絶妙というより、やり過ぎという感じだ。

よくもまあここまでやったものだと思う。

下らないというところで止まらずにさらに突き抜けた感じで気持ちが良い。

登場人物たちもそれに対してあざといわけではなく普通にしているので、滑稽な雰囲気が漂っている。

暗い人間がいない世界

出て来る登場人物がとにかくみんなよくしゃべるし、個性的ではあっても、寡黙で根暗な感じの人間など一人も登場しない。

そういう意味で、リアルな世界を描いた作品ではないかもしれない。

無理やり結婚させられるとか、金の工面に困るなど、それぞれ問題に直面するが、それでも本当の意味で悩む人間など出てこない。

怒ったり暴れたりはしても、問題が深くシリアスになる前に次に場面が移ってしまう。

悩むことに意味があるのか?とか思ってそうな監督なのかもしれない。

話しも一つ一つが深く掘り下げられているわけではないので、考えさせられるという感じでもない。

まあ考えさせるような意図で作っているのではもちろんないのだろう。

なぜイダのお婆さんはダダンを陥れるのに協力したのか?

終盤で、ダダンを陥れるのをイダのお婆さんが協力するシーンがある。

協力するのはいいが、あんなにニコニコするお婆さんではないはずなのに、急にキャラクターが変わっているように見えた。

悪く言えば金の亡者くらいのお婆さんなのに。

ダダンをやっつけられると思って、顔色変えずにポーカーフェイスで陥れたら粋だと思った。

アヒルで自分の体をふくシーン

トイレに落とされたダダンが自分の体をアヒルでふくシーンは面白い。

アヒルには気の毒だが・・・。

だけど、そのシーンがちょっと長めに映されていたし、ダダンの役者も面白いだろうという感じでやっているように見えたので、少し冷めてしまった。

面白いと思ってもそこは匂わさないでやって欲しいと思ってしまった。

見終わるとなんだったんだと思う

見終わると、漫画チックな登場人物の描写や、騒がしいドタバタなシーンが脳裏に焼き付いている。

誰かの感情や気持ちが、というよりは映像自体のインパクトが残る。

食べ物で言うとあらゆる揚げ物を濃い味付けで一気に食べたという感じか。

もうしばらくは食べなくていい、と思う。

決してまずいわけではないが、今はお腹がパンパンすぎて気持ちが悪い。

だが、なんか元気になる。

こんな風に感じる作品もあまりないので、貴重な作品だとは思う。

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